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スクリーン印刷インキにおけるVOC対策

2007.03
十条ケミカル株式会社

1.VOC対策に関係したインキ動向

平成16年6月に大気汚染防止法が改正され、新たに「揮発性有機化合物(VOC)」が規制されることになった。

条文の中で、「揮発性有機化合物とは、大気中に排出され、又は飛散したときに気体である有機化合物(浮遊粒子状物質及びオキシダントの生成の原因とならない物質として政令で定める物質を除く)を言う」 になっており、インキに使用されている有機溶剤が規制の対象となると考えられる。

印刷における主なVOC発生源は、乾燥工程(印刷、版洗浄時の)にあると言って良い。そこでスクリーンインキを乾燥形式で分類すると表1のようになり、それぞれのVOC対策の動向を見てみる。

表1.乾燥方式とVOC対策
乾燥形態タイプ対策
スクリーンインキ蒸発乾燥形態溶剤型使用中止・削減
水性型低VOC
加熱硬化形式一液反応型低VOC・削減
二液反応型低VOC・削減
プラスチゾル型VOCフリー
紫外線硬化方式ラジカル重合型VOCフリー
カチオン重合型VOCフリー

スクリーンインキの主流は、今現在まだ蒸発乾燥形式の溶剤型インキである。

当然VOCとしての有機溶剤を多量に含有しているので、VOC対策の観点から見ると溶剤型インキの使用中止・使用量削減が唯一のVOC対策となる。

水性インキは、脱溶剤インキとして期待されていたが、溶剤型インキやUVインキほど広まっていないのが現状である。

水性インキは、印刷作業性の問題により溶剤を少量含有せざるを得ないことや、印刷被膜の耐水性等の諸物性が溶剤系のインキに比べて弱いという欠点があるからである。

加熱硬化形式の反応型インキは、溶剤型インキに比べてNV(不揮発分)が高い分、低VOC化と言えるが、溶剤含有割合の差は1割から2割低い程度である。

殆ど溶剤を使用していないプラスチゾル型は特殊用途にしか使用されていない。

脱溶剤インキとして80年代に開発された紫外線硬化形式のUVインキは、VOCフリーのインキとして期待されて現在VOC対策の主流になっている。

これは、UVインキの特徴である即硬化性による印刷ラインの省スペース化と印刷速度の向上、臭気等の作業環境の改善、印刷皮膜の諸物性の良さと共にVOCフリーの利点が環境問題と相まって認知されたからである。

水性インキの耐水性等物性の弱点を補強し、版洗浄も水で可能な紫外線硬化形式の水性UVインキも検討されたが、通常のUVインキに比べて物性面での不足、廃水処理の設備投資が必要になることもあって広まらなかった。

スクリーンインキの生産量の統計は、公のデータがないので弊社の生産量から動向を見てみると、UVインキの生産量は10年前に比べると約4〜5倍の生産量になっている。

また、溶剤型・反応型インキとUVインキとの生産量比率を見るとおよそ6:4になっている。

これらから判断して、今後のVOC規制強化の動きから考えても、ますますUVインキがVOC対策の主流としてシェアーを拡大していくものと考えられる。

2.UVインキの技術動向

UVインキがVOC対策に非常に有利であることに代わりはないが、「水と空気以外何にでも印刷できる」をキャッチフレーズにするスクリーン印刷において実際にUV化を進めていくためには、あらゆる材質に適応できるようにUVインキのバリエーションの増加が必須である。

現在UVインキ技術の進歩により、各種材質へのUVインキの適応性は、表2のように広まってきている。

最近では、強固な接着が困難とされていたガラスに対してもイトロ処理という特殊な火炎処理方法で表面処理することによって、UVインキの適応が可能になっている。

このように接着困難な材質でも、表面処理を併用することでUVインキの適応性を更に広げていくことが可能である。

また低価格のUVインキも上市されており、印刷面積当たりの金額で比較するとほぼ溶剤系インキと同程度の価格帯になってきているが、スクリーンインキの主流となるためには、さらなる低コスト化が必要と考える。

今後のUVインキの開発は、これら両面から進められて行くであろう。

表2.各種素材へのUVインキの適応性
材質適応
コート紙
木工品
合成紙
軟質ビニール[PVC]
ビニールステッカー
硬質ビニール[PVC]
アクリル[PMMA
ABS
ASスチロール[PS]
HiPS
ポリカーボネートPC
ポリエステル[PET
処理PET
PETG
APET
ポリウレタン
処理ポリエチレン
未処理ポリプロピレン
塗装面(プラスチック、木、金属)
金属素地
メッキ面
ガラス
セラミック
熱硬化性樹脂
ナイロン布
特殊エンプラ
未処理ポリエチレン
未処理ポリプロピレン
一般ゴム(加硫ゴム)
合成ゴム
EVA
シリコンゴム
樹脂
フッ素樹脂(テフロン)

3.もう一つのVOC問題

シックハウス症候群と呼ばれているVOCによる室内空気汚染が問題となってきている。

平成15年7月1日に施行された改正建築基準法では、シックハウス対策として建築材料のクロルピリホス及びホルムアルデヒドの規制が打ち出されている。

また厚生労働省によるシックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会の中間報告で、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、ホルムアルデヒド等の8物質及びトータルVOCの室内濃度指針値が発表されたりしている。

この問題は、建材だけでなく自動車の車内空気汚染や学校の教室における教科書の問題としても検討されており、スクリーン印刷業界においても今後の動向に注意が必要と思われる。