十条ケミカル株式会社

スクリーンインキをつかう

スクリーン印刷は、様々な材質や形状のものに印刷され、用途や要求される性能も多岐にわたります。スクリーンインキもそれぞれの材質、形状、用途、性能に適した多種多様なものがあり、以下にそれぞれの技術的特徴や使い方、性能、トラブル時の対応などについてまとめました。私たちのこれまでの実績やノウハウが結実した技術情報の数々です。

  • 一般インキ関係

UVインキ(技術解説)

はじめに

 紫外線硬化型インキは一般にUVインキとも呼ばれ、紫外線のエネルギーで光化学反応を起こし、液状から個体へ秒単位で硬化し 皮膜形成を行うインキである。インキの主成分は、光重合性樹脂、光重合開始剤、着色料および助剤で、原則として有機溶剤は含まない。従って 100%固形分となる無溶剤型インキである事が一番の特徴である。UVインキのメリットは単に速硬化性、高度の皮膜物性、脱溶剤等のみならず、スクリーン印刷の理想である「版上では乾かずに印刷後の乾燥が速い」という溶剤型インキで成し得なかった機能性を実現出来た ことである。しかしUVインキは、当初考えられていたような万能インキではない。反応型インキに分類されるが、二液反応型インキほどの強力な接着力は持っていないし、溶剤型インキよりも接着する素材の範囲が狭い場合が多い。

 スクリーン印刷の分野では、溶剤の使用に伴う環境問題への関心の高まりからUVインキの用途開発が非常に活発で、グラフィック印刷の分野でも実用化が広まっておりUVインキ化が定着したと言えるであろう。CDポリボトルへの印刷ではUVインキが主流になっている。以下、現在のUVインキの概略を述べる。

1. UVインキの組成

 UVインキの一般的組成は、溶剤型インキとの組成比較の形で表1に示したようになる。 これより分かるようにUVインキ中には必ず光重合開始剤が含まれており、UVインキ中のオリゴマーやモノマーが紫外線で反応硬化するのもこの為である。また溶剤型インキは溶剤により粘度を調整するが、UVインキは低粘度のオリゴマー・モノマーなどの反応性希釈剤(レジューサー)により粘度を調整して いるので、100%不揮発分のインキとなる。

表1 インキ成分の比較
UVインキ 種類 溶剤型インキ
高粘度オリゴマー ビヒクル 熱可塑性樹脂
低粘度オリゴマー
モノマー類
溶剤各種
光重合開始剤 触媒 なし
顔料 着色剤 顔料
消泡剤
各種調整剤
補助剤 消泡剤
各種調整剤
重合禁止剤 その他 なし

1.1 光重合性樹脂

 紫外線や電子線を照射して重合を行う技術は1940年代より開発されてきたが、当初使用された光重合性樹脂は不飽和ポリエステル系であった。 その後光重合性樹脂の用途が拡大するに従って、さらに性能の優れたアクリレート系やメタクリレート系の光重合性樹脂が開発されてきた。 なかでもアクリレート系は、メタクリレート系に比べても硬化速度が勝っている為、大部分のUVインキにおいてはアクリレート系が使用されている。 これらの光硬化性樹脂は、オリゴマーと反応性希釈剤とに分類される。

 オリゴマーとは、モノマー(基本構造分子)の繰り返し数が2〜20程度の重合体であり、プレポリマーとも呼ばれる。オリゴマーは二重結合と呼ばれ る反応基を末端に2〜6個持っており、粘度的には低粘度液状から半固体状まで幅広く存在する。UVインキの基本物性を支配する樹脂で、代表的な 種類としてポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートなどがあり、その性質は表2にまとめた。

 反応性希釈剤(レジューサー)としては、高沸点のモノマー類や低粘度のポリエステルアクリレート類が使用されている。1分子中に反応基で ある二重結合(>C = C<)を1個持つものを単官能モノマー、2個が2官能モノマー、3個以上を多官能モノマーとして分類し、各々の硬化性は 異なっている。反応性希釈剤はインキの粘度調整用の他、硬化性、接着性などに大きな影響を与えるので、その選定は重要である。

表2 代表的オリゴマーの性能比較
エポキシアクリレート 長所 表面硬化性が優、耐熱性、耐薬品性、硬度、電気特性
短所 耐候性やや劣る、OH基による耐水性の低下、接着性
ウレタンアクリレート 長所 強じん性、柔軟性と伸び、耐薬品性、接着性、低温特性
耐候性(脂肪族系)
短所 高価格、高粘度、黄変性(芳香族系)
ポリエステルアクリレート 長所 バリエーションが広い、低粘度品が多い、低価格、硬度
短所 表面硬化性劣る、耐薬品性

1.2 光重合開始剤

 光重合開始剤は、紫外線エネルギーによりラジカル(活性種)を発生し、これがモノマーやオリゴマーの反応基に反応し重合を開始させる。光重合 開始剤には多種の化合物があるが、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系が一般的に使用されている。化合物に よって紫外線吸収特性、反応開始効率、黄変性等の性質が異なっているので、インキの色等によって使い分ける必要がある。

 光重合開始剤の開始反応を促進させる為に増感剤と呼ばれる助剤を併用する場合がある。この増感剤は紫外線により活性化して反応するわけで なく、光重合開始剤の反応開始を助ける作用だけをする。

1.3 顔料及びその他

 顔料によって紫外線吸収特性が変わるので、顔料はインキの硬化性に大きな影響を及ぼす。インキメーカーはインキの硬化性をなるべく低下させない様な顔料を選定している。また顔料によっては、インキの貯蔵安定性を阻害しゲル化を起こす場合もあるので注意を要し、その他耐モノマー性 も考慮される。

補助剤に関しては、溶剤型インキに使用される助剤類が同様に使用される。

 UVインキは、紫外線があたらなくても熱等の影響でラジカルを発生し、暗反応と呼ばれるゲル化現象を起こす場合がある。それを防止する為に重合禁止剤がp.p.mオーダーで使用される。

2. 紫外線硬化機構

 前述のようにUVインキは紫外線のエネルギーにより反応を起こすが、その紫外線は光の波長の一部分(200〜400nm)で電磁波の一種でもある。また光は粒子性としての性質を持ち最小エネルギー単位の光量子の集まりとしても扱われる。

 光量子のエネルギーΕ
 Ε = hν = hc/λ (h:プランク定数 ν:振動数 c:光速 λ:波長)
 で計算され、紫外線の光量子1モル当りのエネルギー量は71〜143kcal/molとなり、この値は光重合開始剤からラジカルを発生させるのに十分な エネルギー量である。

 光重合性樹脂の反応過程は、反応開始から始まりそして成長反応と連鎖移動反応を連鎖的に繰り返しながら停止反応で終結する。これらの反応過程は瞬時に行われ、最終的に三次元網目構造の硬化皮膜を形成するのである。

3. 硬化性について

 UVインキの実際の使用において、接着に大きく関与するのは硬化性である。硬化に関するトラブルはいろいろな要因により起こる ので、その要因について述べる。

3.1 表面硬化性と内部硬化性

 表面硬化性は、印刷皮膜の表層部の硬化性である。空気中の酸素は、ラジカルと反応してラジカルを消費してしまい活性を失わせる作用がある。 印刷皮膜の表層部はその作用によりラジカル発生密度を低減し、重合速度が遅くなる。このため硬化不良が起こり易く、皮膜表面にアフタータックを生じる。現在は、光重合性樹脂や開始剤の進歩によって問題のないレベルに改善されている。

 内部硬化性は、空気中の酸素の影響を受けない部分の硬化性である。よってインキ皮膜の中層部は、紫外線強度もまだ充分に強いので硬化性の一番良い部分と言える。しかし、紫外線強度はインキ皮膜の深部へ行くに従い弱くなるので、皮膜深層部は重合速度が遅くなってしまう。皮膜深層 部は接着界面部分でもあるので、硬化不良となると接着不良が発生する。従って接着を良くするためには、内部硬化性を良くすることが大切である。 けれども内部硬化性があまりに良くなり過ぎると、内部応力が大きくなるので接着を阻害する場合もあるので注意を要する。

3.2 膜厚と顔料濃度

 インキの紫外線透過性を妨げているのは、主に顔料である。インキ中の顔料濃度はそれぞれの硬化性を考慮して決められているが、印刷時に濃度を向上させるために印刷膜厚を増加すると、皮膜深部への紫外線透過強度は当然低減してくる。紫外線強度がどのように低下するかに関しては、 次式のLambert-Beerの法則が適用できる。
  I = I0・e-ad
  I = 膜厚dにおける透過光強度  I0 = 入射光強度
  a = 吸収係数(顔料・樹脂・開始剤によって決まる)  e = 自然対数の底
 上式により、膜厚dと顔料などに起因する吸収係数aが大きくなると、紫外線透過光強度は対数的に低下することがわかる。すなわち、着色インキでは紫外線硬化できる膜厚には限界がある。

3.3 印刷素材

 インキ皮膜中を透過した紫外線光は、素材表面で反射され散乱光として皮膜中に戻り、皮膜内のラジカル重合に寄与している。同じ照射条件下に おいても印刷素材が異なると硬化性が変わってくるのは、材質の紫外線吸収率と表面反射率が異なるためである。印刷素材が着色されている場合は 、濃色であるほどインキの硬化性を低下させる。

 印刷面の端部も、サイドからの紫外線散乱光により硬化性が印刷面の中央部より良くなる。よって硬化性の確認(接着試験)は、印刷面の中央部 で行うべきである。

4. 接着性

 UVインキが完全に接着する材質は、現状では限定されている。UVインキの接着性を阻害している要因はいろいろ考えられているが、硬化性以外で その主要因は、インキの材質への濡れが劣ることと、硬化時の体積収縮による内部応力発生の悪影響である。実際の印刷において接着を改善する ためには、次のような方法が効果的である。

  1. 紫外線照射の前に印刷されたインキを予備加熱(プレヒート)する。これによりUVインキの材質への濡れが向上すると共に、照射後の内部応力を緩和し接着を向上する。
  2. 紫外線照射後の後加熱(ポストヒート)も、残留応力を緩和して接着を向上する。
  3. 火炎処理(フレーム処理)やコロナ放電処理などの表面処理による方法。
  4. 接着の難しい材質へUVインキの接着しやすいクリアーをアンダーコートする。
  5. 接着の難しい材質を様々な表面処理によって加工した易接着フィルムを使用する(たとえばポリエステルフィルムなど)。
  6. 接着付与剤などのインキへの添加による方法。接着付与剤としては、特殊な極性基を持つ樹脂やカップリング剤などが考えられる。

 そのほか接着に関する問題に、多色印刷の重ね刷りにおける接着性がある。多色印刷の場合、印刷素材は何回もUV照射されるので、はじめの印刷色の皮膜表面がオーバーキュアーしてしまい、後から乗るインキの接着を阻害する。その結果、層間剥離を生ずる。この現象は、熱がかかりやすい 空冷方法の照射機の場合に起こりやすい。また数層重ねられた部分の膜厚は大きくなるので皮膜の粘弾性が低下し、材質面から剥離する場合もある。 これらの問題は、重ね刷り適正の良いインキの選定や照射条件の変更(熱をかかりにくくする。また後の印刷色になるほど、照射量を多くする)によって解決できる。

5. UVインキの物性

 UVインキの物性は、インキ成分のオリゴマーやモノマーの種類や硬化条件により左右される。一般的に2官能オリゴマーと単官能モノマー が主成分である場合には、架橋密度がやや低く膜は柔軟で接着性や重ね刷り適性、後加工適性に優れる。しかし、耐薬品性や耐摩耗性に劣る。2官能や 多官能のオリゴマー、モノマーが主成分である場合には、架橋密度が高く膜は硬くなり耐薬品性や耐摩耗性に優れるが、後加工適性や重ね刷り適性が劣る。 また紫外線照射条件によっても架橋密度が変化するので照射不足気味になると目的の物性が得られない。

 通常UVインキの物性は、架橋構造をとるので溶剤型インキより優れていると言える。
 一例を挙げると表3の如くとなる。

印刷条件
被印刷物 ポリカーボネート 0.5mm厚シート
刷版 ポリエステル300メッシュ(バイアス)ゾル厚10µm
印刷膜厚 10µm
硬化条件 120W、10m/min、(250mJ/cm2
表3 UVインキの物性表
試験項目 方法・条件 結果
接着性 クロスカットセロテープ剥離 優 100/100
耐引掻性 爪による引掻
硬度 JIS K-5400 8.4 鉛筆硬度 3H
重ね刷り性 2色重ね刷りの接着性
耐アルコール性 布に100%アルコールを含浸し往復100回 異状なし
耐ガソリン性 布にガソリンを含浸し往復100回 異状なし
耐溶剤性 布に酢酸エチルを含浸し往復100回 異状なし
耐塩酸性 10%塩酸に 24時間浸漬 異常なし
耐硫酸性 10%硫酸に 24時間浸漬 異状なし
耐アルカリ性 5%苛性ソーダに 24時間浸漬 異状なし
耐摩擦性 摩擦試験機、500 g/cm2荷重、往復300回
耐候性 サンシャインウェザーメーター 400時間 異状なし

 注)記載の数値は試験値であり、保証値ではない。

6. UVインキの使用方法

6.1 UVインキの分類と種類

 インキ形態からUVインキを分類すると次のようなものがある。
 一液型(一般的UVインキ)、二液型(カラーベース方式、及び接着付与剤添加方式)、熱硬化併用型(一液型、又は二液型)、水性型。

 上記水性型UVインキは、紙用のハーフトーンインキとしてヨーロッパでは一般に使用されている。熱硬化併用型UVインキは、プリントサーキット用途などでは使われているが一般的ではない。その他仕上がり状態からグロス型とマット型、皮膜性能から柔軟型と高硬度型に分類することもでき る。特にマット型インキについては、UVインキの開発当初はUVインキが100%不揮発分のために艶消しにすることは困難と思われていたが、UV樹脂系に合った艶消し剤を使用することで可能になった。UVインキもまた溶剤型インキと同様に、材質や用途に合わせたインキの開発が進み、インキシリーズが増えてきている。よって材質や目的に合ったインキの選択が必要になっている。(→材質と推薦インキ

 インキの個別種類として、色インキ系では溶剤型と同じような品種があるが、高濃度高隠蔽性タイプ(EXOインキ)がUVインキでは製造できない。 一方UVインキのクリアー系は、溶剤型にはない独特の表面加飾効果を得ることが出来るので、様々な種類が市販されるようになっている。 一例を挙げると表4の如くとなる。

表4 UVインキのクリアー類
インキの種類 性質
メジウム 金・銀粉の印刷用、一般色の濃度調整用、各種オーバーコート用
強光沢でレベリング性優秀
透明メジウム 透明性を重視したクリアー、ノンシリコン型
マットクリアー 疑似エッチング、ノングレア印刷用。チキソトロピック性が強く紗の目の再現性が良好
透明マットクリアー 透明性の良い、疑似エッチング、ノングレア印刷用。高粘度、透明性
HFTマットクリアー フラットなマット仕上用
DP-1メジウム ランダムな表面、シボ加工状の印刷。シボ感が大きく、耐スクラッチ性も良好
UF-1メジウム DP-1の微粒子タイプ、シボ感がやや小さいが、DP-1に似た仕上がり
UB-1マットクリアー 細かいシボ状の仕上がり(高密度)
UB-2マットクリアー 細かいシボ状の仕上がり(低密度)
RL-Aメジウム 厚盛り印刷用。インキ皮膜が硬く、厚い材質向
RL-Bメジウム 厚盛り印刷用。インキ皮膜がやや柔らかく、薄い材質向
点字用Cメジウム 点字印刷用。インキ皮膜が硬く、厚い材質向
点字用Dメジウム 点字印刷用。インキ皮膜がやや柔らかく、薄い材質向

 注)上記は、レイキュアーGA 4100シリーズのクリアー類
 

6.2 印刷環境

 UVインキは、温度による粘度変化が大きいので室温を調整する必要がある。15〜25℃が適温である。印刷ラインや版の洗浄場所には、直射日光が あたらないようにするべきである。蛍光灯は、よほど近づけない限り問題はない。

6.3 印刷条件

 一般のUVインキはそのまま印刷できるような粘度になっているが、粘度を下げて印刷したい場合は専用のレジューサーを10%以内で添加する。 逆に粘度を上げて印刷したい場合は高粘度のメジウム(マットクリアーなど)を添加する。

 着色インキの印刷には300メッシュ以上のスクリーン版を使用する。スキージは硬度65以上のウレタンスキージが良く、エッジは常にシャープな 状態にする。UVインキの中には、ウレタンスキージを膨潤させる傾向が強いものもあるので注意を要する。膨潤した場合、シャープなエッジが保て ないので取り替えるべきである。クリアー印刷の場合は、厚膜の硬化が可能なので必要とされる膜厚に応じて版を選択すればよい。

特に着色インキの場合、硬化性の面からインキ膜厚を管理することが重要なポイントとなる。インキの膜厚を管理する簡単な方法としては、 ウェット状態で膜厚測定ができるウエットフィルムシックネスゲージを使用する方法と、濃度計で印刷濃度(透過濃度:Dt、反射濃度: Dr)を測定する方法がある。印刷濃度は次式によって、膜厚に比例するので印刷濃度測定値から膜厚変化を推定できる。

 Lambert-Beerの式(3.2の文中の式参照)から
  T = e-D = I/I0 = e-ad
  D = ad
  T:透過率 D:濃度
 このような膜厚管理を行えば、硬化不良等の大きなトラブルを避ける事が出来る。

 なおUVインキ1kg当たりの印刷可能面積は、印刷膜厚とインキ比重がわかれば計算できる。例えば、膜厚10µmで比重1.0から1.3とすると
  インキ重量(kg)÷(膜厚µm×比重×10-3) = 印刷可能面積(m2)
 から計算して100m2 〜77m2となる。

6.4 予備テストと照射条件

 UVインキは、照射条件を決定するために必ず実際のラインで予備テストを行う必要がある。印刷素材も本生産に使われるものを使用する。 予備テストは所定の照射条件で硬化させた後、印刷面のアフタータック(指触による)、接着性(クロスカットセロテープ剥離)、耐引掻性 (爪で可)、折り曲げ性などの試験を行い、これらの試験を満足するように照射条件や印刷膜厚を調整する。照射条件としては、

  1. ランプ強度(総ランプ電力W÷ランプ長さcm = W/cm)
  2. ランプ本数
  3. 照射距離(一般的には焦点距離)
  4. コンベア速度(あるいは積算光量)
  5. プレヒートの有無

 がある。特に積算光量は重要である。また多色刷りを行う場合には、それに合わせた重ね刷りの予備テストを行うことも必要である。

6.5 インキの安全性

 UVインキは、蒸発物がないので吸入による心配はないが、皮膚刺激性が若干あるので取り扱いに注意を要する。皮膚刺激性の目安として皮膚 刺激指数(P.I.I)が設定されている(表5参照)。皮膚刺激性はモノマーとオリゴマーによるものであるが、 最近はP.I.Iが0に近いものが多くなっている。UVインキの取り扱いの際は、保護手袋を着用し極力皮膚に接触しないように注意し、もし付着した ときは石鹸水で直ちに洗い落とすことが必要である。

 UVインキには溶剤を使用していないので、有機溶剤中毒予防規則には該当しない。

 消防法による危険物分類によれば、UVインキは危険物第4類第3石油類に該当するものと、非危険物であるが指定可燃物(可燃性液体類又は可燃性 固体類)に該当するものがある。UVインキの組成によって分類が違うので、インキラベルの表示を確認することが肝心である。

表5 皮膚刺激指数
P.I.I. 評価
0.00〜0.03 皮膚刺激なし
0.04〜0.99 極く僅かである
1.00〜1.99 僅かである
2.00〜2.99 穏やかな刺激
3.00〜5.99 中程度の刺激
6.00〜8.00 かなり強い刺激

6.6 貯蔵安定性

 UVインキは、貯蔵中に光が当たらなくてもゲル化して固まることがある(暗反応)。これはモノマーやオリゴマーが熱によりラジカルを発生し重合 を起こすためである。気温が40℃以下であっても、そばに熱源があったりすると放射熱をインキが蓄積しラジカルを発生させる場合もある。従って UVインキは、冷暗所に保管するのがよい。また時々インキを攪拌して空気を混入し、インキ中に発生したラジカルを空気中の酸素により非活性化 することも大切である。慎重に配慮して貯蔵すれば2年間の貯蔵が可能であるが、なるべくならば製造後1年以内に使用することをおすすめする。

7. UV照射機

 UV照射機は、UVランプと照射装置(反射板、本体、コンベア等)及び電源装置から構成されている。そのシステムには多数の形式 があるので、その選択は印刷目的、システム、作業環境などにより決めねばならない。この項ではUV照射機のインキに関連する事項について概略 を述べる。

7.1 ランプの種類

 ランプから放射する紫外線を反射板に効率よく照射する方法としては3通りあるが、スクリーン印刷では集束型でコンベア使用が一般的である。

 ランプとして主に使用されるのは、高圧水銀灯とメタルハライドランプである。その他に超高圧水銀灯、キセノンランプがあるが、ランプ寿命や 紫外線量、ランプ長の点であまり実用的でない。

 インキの硬化性に大きな影響を及ぼすのは、ランプの発光スペクトルである。UVランプは紫外線のみならず可視光や赤外線も発光しており、 紫外線の発生効率は20〜30%である。この紫外線の中でUVインキの硬化性に有効な波長域は、320〜400nmの長波長域と考えられている。これは 長波長の方が透過性に有利であることと、UVインキに使用される顔料が365nm近くに最大透過率を示すものが多いことによる。従って膜厚の比較的 大きいスクリーン印刷の場合には、長波長の発光量が多いメタルハライドランプが内部硬化性に有利である。

表6 ランプミラーの形状
種 類 特徴
集束型 断面形状は楕円面で構成され、二次焦点が被照射面に位置する。
被照射面に細い ビーム状の紫外線を照射する。
並行型 断面形状は放射面で構成される。
被照射面に広い範囲で紫外線を照射する。
散乱型 断面形状は変形放物面で構成される。
被照射面管軸方向のある範囲に、比較的一様な紫外線を照射する。

7.2 ランプ管理

 ランプの寿命は、初期紫外線強度(UV照度)の70%になった時を寿命と考えており、およそ1000〜1500時間位である。インキの硬化性を管理する には、ランプ管理も合わせて行う必要がある。そのためには紫外線強時計か紫外線光量計(UV積算光量計)で測定を行う必要がある。ランプ強度は、 紫外線強度に比例する。また紫外線の強度と光量の関係は次式の通りである。
  (紫外線積算光量mJ/cm2) = ∫(紫外線強度W/cm2)×dt
 よってランプが古くなり紫外線強度が低下してくると、紫外線積算光量も比例して低下することがわかる。積算光量か強度のどちらかがわかれば、 ランプを管理することができる。最近は、インキの硬化性を判断するのに紫外線積算光量値が使われる場合が多い。

7.3 照射機と冷却方法

 ランプ温度は非常に高く、放電方式では800℃以上になる。この熱を冷却するために空冷方式と水冷方式がある。 表7は両方式の比較である。

 UVランプからの輻射熱により、耐熱性の低い印刷素材は変形を起こすので、この輻射熱をさらに減少するためにいろいろな工夫がなされている。 その代表的な方法は、コールドミラー方式である。コールドミラーは、ガラスにアルミ蒸着を施してハーフミラー状にしたもので、紫外線のみを 反射しIRと可視光の殆どを透過する性質を持っている。この性質を利用して印刷素材への直接的な熱の影響を抑える。その他IRカットフィルターを ランプの下に置く方法や、ランプの真下の本体ボードを冷却する水冷ボード方式などがある。

表7 水冷方式と空冷方式の比較
水冷方式 項目 空冷方式
少ない(40〜50%カット) 素材への熱的影響 多い
60℃位 炉内温度 80℃位
やや低い
(低波長域の熱線カットによる)
UVエネルギー 水冷よりやや多い
熱的影響が少ない分やや劣る 硬化速度 熱的影響が多いので良好
照射条件幅が大きくとれる 重ね刷り適性
(層間剥離)
表面硬化性が良くなり過ぎて
照射条件がかなり限定される
高い 設備費 安い
やや割高
(循環水のクーラーまたは流出水代)
運転コスト 水冷より安い
難しい(水冷システム) メンテナンス 容易
水冷ジャケットにより保護 ランプの汚れ 空気循環により表面が汚れ易い
安定器の音のみで静か 運転音 排気ファンの音がうるさい
やや長い ランプ寿命 やや短い

参考文献

  • スクリーン印刷技術  (株)総合技術センター(H5.4)
  • その他

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